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blog 最終更新日:2016年4月29日 4:56 PM

【レポート】『少女と悪魔と風車小屋』プレパフォーマンスの引き続き準備中☆

オリヴィエ・ピィのグリム童話『少女と悪魔と風車小屋』では、
開演前にプレパフォーマンスがございます。
準備の様子をSPACシアタークルーの小溝朱里さんがレポートしてくださいました。

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みなさん、こんにちは。

今年の演劇祭で5/7(土)、8(日)に舞台芸術公園「有度」にて上演されます、
オリヴィエ・ピィのグリム童話『少女と悪魔と風車小屋』(以下、『グリム』)
の演目担当クルーをさせていただく、小溝と申します。
ささやかながら、この演劇祭に関わることができ、
本当に嬉しく思います。
どうぞよろしくお願い致します。

ついに演劇祭開幕まで1週間を切りましたね。
今年はなんと五大陸を代表する演劇がやってくる一方で、
劇場を飛び出して静岡のまちなかで行われる企画もあり、
私自身とてもワクワクしています。

さて、私が担当させていただく『グリム』ですが、
“こどもと一緒に「世界演劇」を観よう!”と題して
小学生以下は無料で観劇することができます。
グリム童話で子どもにも理解しやすいとはいえ、フランス語で上演されるこの演目。
日本語字幕はありますが、子どもでも大丈夫かな…?と
少し心配される親御さんもいらっしゃるかもしれません。

ですがご安心ください。
子どもたちにも楽しんで観劇してもらえるよう、開演30分前より
野外劇場前広場にてSPAC俳優の永井健二さんを中心に、
ストーリー紹介のパフォーマンスをしてくださいます。

先日、私は先輩クルーの方と一緒に、そのパフォーマンスで使う
小道具作成のお手伝いをさせていただきました。
なんとそこで使われる小道具は、俳優さん自ら材料を調達し、
ひとつひとつ手作りで作られています…!
画用紙を切ったり、発泡スチロールで形作ったり、道具の色を変えたり。
数時間お手伝いしましたが、このような作業はついつい
夢中になってしまうものです。
黙々とひたすら作業し、あっという間に時間が
経過してしまいました。
私自身久しぶりの工作、とても楽しくお手伝いさせていただきました!

ほんの一部ですが先にお見せしますと…
このような道具が↓
image1

このように変わりました↓
image2

既に物語のあらすじをご存知の方は、これら道具が
どのような場面で使われるか、想像が膨らむかもしれませんね。
他にも人間と等身大のあんなものが……登場しますよ(笑)

開演前の短い時間ですが、SPACの俳優さんがストーリー紹介を
目の前でしてくださるのは、なんて贅沢!と思ってしまいます。
愛情込めて作られている小道具にも注目しながら、
わずかな時間ですら贅沢に、そして楽しんで過ごして
いただければと思います。
『グリム』の本編と共に、楽しみにしていてください。

では、当日野外劇場にてみなさんにお会いできることを
楽しみにしております!

SPACシアタークルー 小溝朱里

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オリヴィエ・ピィのグリム童話
『少女と悪魔と風車小屋』
作・演出 オリヴィエ・ピィ
5/7(土)・5/8(日)各日18:30開演
舞台芸術公園 野外劇場「有度」
☆公演の詳細はこちら
★2014年7月アヴィニヨン演劇祭での公演の様子はこちら
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blog 最終更新日:2016年4月29日 10:38 AM

ティム・ワッツのまなざし(横山義志)

SPAC文芸部 横山義志

ティム・ワッツはオーストラリア大陸の西南にあるパースという町を拠点として人形劇を作っている。パースは「世界で最も孤独な都市」と呼ばれていたりする。オーストラリアの大都市のほとんどは東部にある。パース都市圏の人口は約150万。西オーストラリア州の人口は250万人だが、90%は砂漠あるいは半砂漠地帯で、ほとんどの住民がパースの周辺に住んでいる。南に行けば南極、西に行けば南アフリカ、東に行けばチリの南端パタゴニアに行き着く。2012年の演劇祭で上演してくれた『アルヴィン・スプートニクの深海探検』の冒頭では、地球温暖化で海面が上昇した世界を舟で一周する場面があるが、パースからの「世界一周」は、私たちがイメージするのとだいぶ異なっていた。

なぜこんなところに大都市ができたのか。それは鉱山があったからだ。今でも鉱業が主要な産業の一つになっている。町から一歩出れば、広大な砂漠地帯が広がる。パースから車を飛ばして他の西部の町まで行くのはけっこう命がけらしい。数百キロ走っても対抗車に出会わなかったりする。途中でカンガルーが飛び出て、ぶつかって車が故障したりしたら、歩いて行ける範囲には誰も住んでいないかも知れない。だからオーストラリア人は車を修理するのがうまいという。シドニーまでは電車で48時間と聞いた。シドニーよりもジャカルタやシンガポールの方が距離的には近かったりする。

オーストラリア人は奥地の集落に住む「ブッシュマン」に憧れ、そのさらに奥にある「アウトバック」と呼ばれる荒野にこそ「本物のオーストラリアがある」という。『It’s Dark Outside おうちにかえろう』では、老人がそんな荒野へと旅立っていく。西部劇をイメージした、とワッツは語っていたが、アメリカの西部とオーストラリアの西部とが入り混じっているようにも見える。若いヒーローを描いた『アルヴィン・スプートニク』から一転して、老人を主人公にした作品と聞いて、ちょっと驚いた。二作品に共通するのは、強烈な孤独感だ。自分の住む町に、人類はもう自分しかいないかも知れない、というくらいの孤独。スプートニクは恋人を失って孤独になり、海底探検へと旅立つのだが、『It’s Dark Outside』では、はじめから孤独な老人が、さらに孤独になるために、荒野へと足を踏み出していく。

ここでは、認知症患者によく見られる「夕暮れ症候群」が描かれている。夕暮れ時になると、アパートやホームを出て、町をさまよう。日が暮れる頃に、あわてて仕事を終わらせて家に帰ったり、帰ってくる人のために家に戻って食事を作ったり、という記憶の名残だともいう。その安住の地が「わたしの家」ではない、という感覚もそこにはある。『It’s Dark Outside』では、老人は一言も話さない。そもそも話す相手がいないのだから。だが、同伴者を見つけ、言葉は交わさなくても、気持ちを通わせるようになる。そして荒野に自分の居場所を求めていく。認知症患者の世界をこれほど詩的に描いた作品があっただろうか。ワッツの作品には、人間を見つめる強靱な力を感じる。自分を見つめるかのように他者を見つめる力。そのまなざしを、学ばなければと思う。

blog 最終更新日:2016年4月28日 8:06 PM

いよいよ明日開幕!ふじのくに⇄せかい演劇祭

ふじのくに⇄せかい演劇祭2016がいよいよ明日開幕します!

会場のひとつ、静岡芸術劇場ではまさに準備の真っ最中。
演劇祭を支えるシアタークルー(ボランティア)さんたちが、お客様にお配りするチラシ類の挟み込み作業を急ピッチで行っています。

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クルーの皆さんが作業をしているここ静岡芸術劇場2Fのカフェ・シンデレラでは、明日『三代目、りちゃあど』開演に先立ち、開幕式ならびに野球の始球式に着想を得た「始演式」を開催。『三代目、りちゃあど』の元となったシェイクスピアの傑作『リチャード三世』の一節を朗読します。お茶どころ静岡ならではの呈茶サービスもありますので、ぜひご参加ください♪

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そして…駿府城公園では、SPAC新作『イナバとナバホの白兎』の仕込み&稽古が着々と進行中。
静岡市民の憩いの場、駿府城公園に突如現れた巨大なステージ。その上で、俳優たちの声と身体を借りて、今まさに、生命の理・人の営みをあらわす壮大な神話世界が紡ぎ出されようとしています。その全貌は・・・ぜひあなた自身の目で!!

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駿府城公園とその周辺では、『イナバとナバホの白兎』公演期間中の5/3~5、ストレンジシードフェスティバルgarden、そして・・・静岡初上陸となる話題の「肉フェス」も開催します!(肉フェスは一足先に本日からスタートしています)食べて飲んで観て・・・『イナバとナバホの白兎』とハシゴでお楽しみください♪

なお、チケット完売の公演も出ております。
気になる公演は1日でも早くご予約ください!!

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★最新のチケット販売状況はこちら
https://festival-shizuoka.jp/2016/information/965/

★演劇祭の最新情報は、特設サイトをご覧ください
https://festival-shizuoka.jp/2016/

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blog 最終更新日:2016年4月25日 3:47 PM

【レポート】オリヴィエ・ピィのグリム童話『少女と悪魔と風車小屋』プレパフォーマンスの準備も進行中!

オリヴィエ・ピィのグリム童話『少女と悪魔と風車小屋』では、 開演前にプレパフォーマンスがございます。 準備の様子をSPACシアタークルーの河村夏葵さんがレポートしてくださいました。

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こんにちは。

新人シアタークルーの河村です!
オリヴィエ・ピィのグリム童話『少女と悪魔と風車小屋』演目担当クルーになりました。
初めてブログを書くので、伝わりにくい部分も多々あると思いますが、
少しの時間お付き合いください。

『少女と悪魔と風車小屋』では始まる前にSPACの俳優がストーリーの内容をご紹介するプレパフォーマンスを行います!!(開演前30分前より、野外劇場前広場にて。出演俳優:永井健二・佐藤ゆず・鈴木真理子・武石守正)
今日はその小道具制作のお手伝いをしてきました。

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『少女と悪魔と風車小屋』は、
グリム童話の『手なし娘』というお話が元になっているようなのですが・・・
題名だけ聞いたら怖いですよね。

でも、安心してください!!
この公演は、「親子で観よう!」となっていまして、
今日作った小道具を見る限り、
怖がりな私でも可愛いなぁというのが印象です。

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プレパフォーマンスも公演も無事成功するように
シアタークルーである私達、
全力でサポートしていきたいと思っています!!

ふじのくに⇄せかい演劇祭2016開幕まで、あとわずか。
とっても楽しみですね♪

SPACシアタークルー 河村夏葵

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オリヴィエ・ピィのグリム童話
『少女と悪魔と風車小屋』
作・演出 オリヴィエ・ピィ
5/7(土)・5/8(日)各日18:30開演
舞台芸術公園 野外劇場「有度」
☆公演の詳細はこちら
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blog 最終更新日:2016年4月23日 12:42 PM

ワジディ・ムアワッドのこと(横山義志)

SPAC文芸部 横山義志

2016年4月6日、ワジディ・ムアワッドがパリのコリーヌ国立劇場の芸術監督に選出され、即日任命された。けっこう胸が熱くなるニュースだった。ムアワッド家は1976年、ワジディが8歳のときに戦火のレバノンから親に連れられてフランスに渡り、15歳のとき、滞在許可証の更新許可が下りなかったため、再亡命を余儀なくされたという過去があった。

この芸術監督就任のため、今年のツアーはいくつかキャンセルせざるをえなくなったという。静岡には来てくれるそうで、ちょっとほっとした。いつか舞台芸術公園を案内したとき、大きなジョロウグモに夢中でカメラを向け、『ファーブル昆虫記』について熱く語ってくれたワジディの姿を思い出した。今年こそは昆虫採集に、と思ってくれたのかも知れない。

ムアワッド一家は1983年、同じフランス語圏のカナダ・ケベック州に再亡命した。それからわずか十数年後には、ワジディはケベック州を代表する演劇人になっていた。ワジディの作品ではケベック方言も使われていたが、ワジディ本人の「フランス訛り」のフランス語を聞いていると、なんだか複雑な気分だった。2012年からは主にフランスに住んでいる。フランス人女性と出会ったこともあるが、ケベックではすっかりスターになってしまったので、フランスの方がまだ静かな環境で仕事がしやすいというのも理由の一つらしい。

レバノンは一時期フランス領だったこともあり、今でもフランスとの交流が多い。フランス語で教えている大学もあり、フランス語話者が少なくない。フランスとの交流は十字軍時代にまで遡ることができる。11世紀、レバノン山地周辺に住むマロン派キリスト教徒は、エルサレムに入城する十字軍の「フランク人」たちを歓迎した。それから900年近くを経て、第一次大戦後にフランスがシリア地方を占領したとき、フランスはキリスト教徒が多いレバノン山地をシリアから分離させた。これが今のレバノンの原型となる。つまりレバノンという国は、中東では少数派のキリスト教徒が多数派となりうるような国として作られたのである。レバノンのアラブ系キリスト教徒たちは商人としてアラブ世界と西洋世界をつなぐ役割を担い、商業都市・文化都市として栄えたベイルートは「中東のパリ」とも呼ばれた。だが、1970年代にパレスチナ解放機構(PLO)が流入することで宗派間の勢力均衡が破れ、長い内戦がはじまることになる。

内戦を経験したレバノン人は自分の宗教についてはあまり語りたがらないが、ワジディはあるインタビューで、少しだけ自分の出自について語っていた。キリスト教徒の商人の家に生まれたという。親戚には「フランソワ」、「パスカル」といったフランス的なファーストネームを持つ者も少なくなかった。そのなかで、自分の「ワジディ」といういかにもアラブ的、レバノン的なファーストネームが、幼い頃はあまり好きになれなかった。「ワジディ」は「存在」や「生命」を表す言葉に由来する。

今にして思えば、ワジディが世界的に重要な劇作家になったのには、ケベックへの二度目の亡命体験が大きかったのではないか。フランスには、言語を超えて読まれ、上演されるような「物語」を書く劇作家が少ない。一つには、フランス語への愛着と信頼が大きすぎるためだろう。だが北米ではフランス語はマイナー言語の一つに過ぎない。そしてヨーロッパほどに「物語の解体」が常識になっていたりもしない。

「母語」だったはずのアラビア語レバノン方言はほとんど話す機会がなかったとしても、舞台作品でレバノン時代の記憶を扱うようになると、当然そこには「翻訳」という感覚が出てくる。アラビア語の詩をフランス語に移すことは可能なのか。ワジディの作品を見ていると、それがあたかも「自然」なことのように思えてくる。ワジディの記憶の底におぼろげに眠るアラビア語の響きに明瞭な形をもたせようとすると、フランス語の形を取って出てくるのかも知れない。ワジディの作品には、物語も詩も翻訳しうる、という確信のようなものが見える。これは言語とアイデンティティという問題についての、ワジディなりの一つの回答なのではないか。言葉は境界を作るものではなく、人をつなげるものでなければならない、ということ。

ワジディの作品はフランスの高校でもよく読まれたり上演されたりしていて、若い世代のファンが多い。2009年のアヴィニョン演劇祭で、メイン会場の法王庁中庭で、11時間かけてワジディの三部作が上演されたとき、二十代の観客たちが明け方に熱狂的な歓声を送っていたのを思い出す。今回コリーヌ国立劇場の芸術監督に選ばれたのにも、「若い観客を呼び込みたい」という文化省の意向が大きかったのではないか。

以前静岡で上演した『頼むから静かに死んでくれ』も、今回の『火傷するほど独り』も、なんだか胸を締め付けられるような話だ。こういう演劇体験というのは、今本当に少なくなっている気がする。あとから考えると、「物語」をつくる技術もすごいと思うが、見ている間はそんなことは考えられず、とにかく没頭してしまう。どうしても伝えたいことがあるからこそ、語りの技術を日々磨いてきた作家なのだと思う。

 

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日本初演
『火傷するほど独り』
作・演出・出演:ワジディ・ムアワッド
5/7(土)~8(日)
静岡芸術劇場
☆公演の詳細はこちら
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