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メッセージ

ひとのせいにしなくていいっていいね!

 生物の多様性が結果として地球を守ってゆくのと同じく、社会は多様な価値観を併存させている方が最終的にしぶとさを持つことは歴史が明示してくれています。にもかかわらず異なる価値観を持つ者を排除しようとする傾向がなぜ社会に生まれるのでしょうか。それをたどってゆくと、「排外的な思想」は「人々が自信を失っている状態」と深い関係にあることに気づきます。
 いま日本人は、一人あたりの国民所得がアップしなかった最近30年を振り返って、すっかり自己肯定感を失っています。しかし世界の中で考えてみれば、本来の「人間の自信」というものが現在の日本の環境で獲得できないはずはありません。
 では、「人間の自信」を深いところで取り戻すにはどういう処方がありえるでしょうか?
 僕にはいまの日本人が「自分の人生をなんのために使うか」という基本的なところで迷子になっているように感じられます。
 高度成長期からバブル期までは、多くの日本人が「豊かになるために働くのだ」と考えていたでしょう。これはまあ、日本という国が決めてくれた人生の使い方です。しかしバブルがはじけて以降の30年間、日本では「なんのために生きるか、人生の使い道をおのおのが選ぶ」とはならなかったようです。「上が決めてくれないので、周りに合わせていた」のかもしれません。
 なのでこの先、日本の人々が自己肯定感を持って生きるためには、自分の人生を何に使うかを自分で選ぶことがまずいちばんのポイントになるのではないでしょうか。そして多くの市民にとって、テレビでしか見られないような遠いところにではなく自分の身近に、人生を何に使うかを自分で選んだ人がいて、「そんな選択をしたら人生詰んじゃうのでは」と思いきや、なんとかかんとか生きている、という姿を目撃できれば、それが励ましになるのではないでしょうか。
 僕は、こんにちの日本社会でアーティストが果たすべき役割はここにこそあると思っています。「ああ、これでいいんだ、人生の使い道を自分で決めていいんだ」という実に当り前の気づきが地域の人々に広がることで、市民社会の活性化(そして安定化)につながると思うからです。

SPAC芸術総監督 宮城 聰

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宮城聰(SPAC芸術総監督)

© 新良太

宮城 聰 MIYAGI Satoshi
1959年東京生まれ。演出家。SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督。東京大学で小田島雄志・渡邊守章・日高八郎各師から演劇論を学び、90年ク・ナウカ旗揚げ。国際的な公演活動を展開し、同時代的テキスト解釈とアジア演劇の身体技法や様式性を融合させた演出で国内外から高い評価を得る。2007年4月SPAC芸術総監督に就任。自作の上演と並行して世界各地から現代社会を鋭く切り取った作品を次々と招聘、またアウトリーチにも力を注ぎ「世界を見る窓」としての劇場運営をおこなっている。17年『アンティゴネ』を仏・アヴィニョン演劇祭のオープニング作品として法王庁中庭で上演、同演劇祭史上初めてアジアの劇団が開幕を飾った。他の代表作に『王女メデイア』『マハーバーラタ』『ペール・ギュント』など。近年はオペラの演出も手がけ、22年6月に世界的なオペラの祭典、仏・エクサンプロヴァンス音楽祭にて『イドメネオ』、同年12月には独・ベルリン国立歌劇場における初の日本人演出家として『ポントの王ミトリダーテ』を演出し大きな反響を呼んだ。04年第3回朝日舞台芸術賞受賞。05年第2回アサヒビール芸術賞受賞。18年平成29年度第68回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。19年4月フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。

ふじのくに⇄せかい演劇祭とは

SPAC‐静岡県舞台芸術センターでは、1999年に開催された世界の舞台芸術の祭典「第2回シアター・オリンピックス」の成功を受けて、2000年より「Shizuoka 春の芸術祭」を毎年行い、各国から優れた舞台芸術作品を招聘・紹介してきました。SPACが活動15年目を迎えた2011年からは、名称を「ふじのくに⇄せかい演劇祭」と改め、新たなスタートを切りました。
「ふじのくに⇄せかい演劇祭」という名称には、「ふじのくに(静岡県)と世界は演劇を通して、ダイレクトに繋がっている」というメッセージが込められています。静岡県の文化政策である「演劇の都」構想と連携しながら、世界最先端の演劇はもちろん、ダンス、映像、音楽、優れた古典芸能などを招聘し、静岡で世界中のアーティストが出会い、交流する――そんなダイナミックな「ふじのくにと世界の交流(ふじのくに⇄せかい)」を理念としています。
2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大により中止となり、代わりにオンラインの「くものうえ⇅せかい演劇祭」を実施しました。

「東アジア文化都市」とは

日中韓文化大臣会合での合意に基づき、日本・中国・韓国の3か国において、文化芸術による発展を目指す都市を選定し、文化交流、文化芸術イベント等を実施する国家的プロジェクトです。これにより、アジア域内の相互理解・連帯感の形成を促進するとともに、東アジアの多様な文化の国際発信力の強化を図ることを目指します。また、東アジア文化都市に選定された都市がその文化的特徴を生かして、文化芸術・クリエイティブ産業・観光の振興を推進することにより、継続的に発展することも目的としています。
「東アジア文化都市」誕生から10年、また、富士山の世界文化遺産登録10周年を迎える節目の年である2023年、静岡県は、中国の成都市、梅州市、韓国の全州市の3都市とともに、「東アジア文化都市」に選定され、日本の文化首都として、「東アジア文化都市2023静岡県」を開催します。1年間を通じて、県内全域で切れ目なく多彩なイベントを開催し、静岡の、そして日本の「文化」の魅力を世界に発信します。
https://culturecity-shizuoka.jp/

SPAC-静岡県舞台芸術センター

公益財団法人静岡県舞台芸術センター(Shizuoka Performing Arts Center : SPAC)は、専用の劇場や稽古場を拠点として、俳優、舞台技術・制作スタッフが活動を行う日本で初めての公立文化事業集団であり、舞台芸術作品の創造・上演とともに、優れた舞台芸術の紹介や舞台芸術家の育成を事業目的としています。1997年から初代芸術総監督鈴木忠志のもとで本格的な活動を開始。2007年より宮城聰が芸術総監督に就任し、更に事業を発展させています。演劇の創造、上演、招聘活動以外にも、教育機関としての公共劇場のあり方を重視し、中高生鑑賞事業公演や人材育成事業、アウトリーチ活動などを続けています。13年、全国知事会第6 回先進政策創造会議により、静岡県の SPACへの取り組みが「先進政策大賞」に選出。18年度グッドデザイン賞を受賞、無形の活動が一つのデザインとして高く評価されました。2022年7月に活動開始25周年を迎えました。

お問い合わせ

SPAC-静岡県舞台芸術センター
〒422-8019 静岡県静岡市駿河区東静岡2丁目3-1
TEL:054-203-5730 FAX:054-203-5732
E-mail:mail@spac.or.jp

[ふじのくに⇄せかい演劇祭2023]
主催:SPAC-静岡県舞台芸術センター、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
ふじのくに芸術祭共催事業

[ふじのくに野外芸術フェスタ2023静岡]
主催:ふじのくに野外芸術フェスタ実行委員会

日本博 ふじのくに芸術回廊 GOOD DESIGN AWARD 2016
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