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【5/3演劇祭レポート】昏睡…それは今のシリアの置かれた状況『ダマスカス While I Was Waiting』

休演日を挟んでの5/3(水・祝)。
この日、シリアからやってきた 『ダマスカス While I Was Waiting』が初日を迎えました。

2011年に始まったシリアの民主化運動から6年――。現政権と反政府勢力の争いに、ISの動き、アメリカ・ロシアといった大国の思惑、宗教や民族対立までもが絡み合い、混迷を深めているシリア情勢。先日は、現政権が化学兵器を使用して多数の住民を殺害したと見られることから、アメリカ軍は対抗措置としてシリアをミサイル攻撃し、日本でも連日テレビや新聞で大きく取り上げられました。

しかし、私たちは今まさにシリアで暮らす人たちが、日々どんなことを考え、どんな生活を送っているのか、全く知りません…。静岡で、いや東京ですら、シリア出身の方に出会う確率はほんのわずかです。インターネット上では膨大な情報が流れているのに、そこには生身の人間が欠けている…、だから「遠い国の自分たちとは違う世界の出来事」にどうしてもなりがちです。

しかし、この作品を通じて、シリアで暮らす人々のリアルな現実、そしてどこでどんな状況で生きていても変わらない「人間」の姿を目の当たりにしました。

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本公演では、舞台上に客席を設け、俳優と観客の物理的な距離を可能な限り近付けました。俳優たちの体温や息遣いまでもがすぐ傍に感じられる空間に身を置くと、まるで主人公タイムが入院する病室や家に、彼の家族あるいは友人としているような錯覚さえ覚えます。

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目の前で綴られる、家族・友人・恋人との確執や愛、不安や戸惑い、絶望と希望…。
強く思いました。この物語は自分自身の物語でもあるかもしれないのだと。

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終演後にはアーティストトークも開催。当初は演出のオマル・アブーサアダさんのみが登壇する予定でしたが、俳優たちや舞台美術スタッフも登壇することに。お客様からは紹介しきれないほどの多くの質問が寄せられました。

シリアでは、体制を批判する作品は上演を許されませんので、本作は国内では絶対に上演できないそうです。また、今回集まった俳優やスタッフたちの約半数はダマスカスにとどまっているものの、半数は様々な理由でシリアを出国せざるを得なくなり、ドイツ・ベルリンやエジプト・カイロで生活しています。

日本で生活する私たちは、つい「こんな状況でどうやって演劇をやっているの?」「何故こんな状況なのにやり続けているの?」と考えてしまいます。それでも皆さん演劇が好きで、自分には表現手段としてこれしか出来ないから、演劇に拘り、やりつづけているのだそう。

別の機会に、オマルさん&ムハンマドさんにお話しを伺った際、お二人は、「この作品を上演することでシリアの状況が変わるわけではない。でも、シリアのリアルな今を知っていただくことに大きな意味がある」とおっしゃっていました。また「長い目で見れば、必ず良い方向に向かうと信じている。人々は民主化運動以前とは異なり、色々な事に疑問を持ったり、自ら考えたりするようになった。もう昔に戻ることはない」とも。お二人とも、そしてきっと今回来日したメンバー全員が、いつか必ず本当の春が来ると強く信じているんですね。

こんなに力強い希望に満ちた作品をここ静岡で上演くださったオマルさん、ムハンマドさん、俳優・スタッフの皆さん、本当にありがとうございました!

そしてこの日、 『MOON』は千穐楽を迎えました。
ご来場くださったお客様一人一人が作品を創り、そして何かを感じ取り持ち帰ってくださった作品だと思います。何とか3公演ケガ人もなく、無事に終えることができました。ありがとうございました!!

終演後、野外劇場の楽屋で大量のヘルメットを片付けるシアタークルーの皆さんをパシャリ。

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さあ、いよいよ4日からは 『アンティゴネ』がスタートします!!

[番外編]本部棟で当日配布物を入れていた箱におさまるマメ山田さんを思わずパシャリ。

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ふじのくに⇄せかい演劇祭2017

2017年4月28日(金)~5月7日(日)
静岡芸術劇場/舞台芸術公園/駿府城公園 ほか

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