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【クルーレポート】『火傷するほど独り』

5/7(土)、8(日)の2日間。静岡芸術劇場にて上演した『火傷するほど独り』
本作は、「Shizuoka春の芸術祭2010」にて『頼むから静かに死んでくれ』を上演し、私たちに鮮烈な印象を残したワジディ・ムアワッド氏自身が舞台に立つ一人芝居です。レバノンに生まれ、幼くしてフランスからカナダへ移った本人の生い立ちが作品には色濃く反映され、自らのアイデンティティーへの痛切な問いかけと自己の存在を刻み付けるかのような衝撃的なラストに、終演後しばらく動くことが出来なかった方も多いのではないでしょうか?
本作の観劇レポートを、シアタークルーの岩橋くるみさんが寄せてくれましたので、ご紹介します。

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『火傷するほど独り』を観てきました。私にとって、今回の演劇祭で観る最後の作品でした。

舞台の上にはたった一人しかいませんでした。それなのに、最初から最後まで、その演技に惹き付けられてしまいました。動きや仕草の一つ一つに隙がなく、そこから様々な気持ちがにじみ出ているようでした。

主人公のハルワンは父親や大学の教授など様々な人に電話をかけています。色々な人に電話をかけて、いわばずっと誰かと「つながっている」のです。それなのに、そのことでかえって主人公が孤独になっているように見えて、それがとても不思議でした。

でも、私にとってハルワンの感じているであろう様々な焦りや寂しさ、そして何とかして他の人に認めてもらいたい、というような気持ちには、すべてとは言えませんが、共感できるものがありました。

後半のシーンで、ペンキを次から次へと壁に塗っていく様子はとても強烈でした。沢山の色を、時にたたきつけるように、全身で塗りたくっていました。壁はとてもカラフルになり、一瞬きれいなようにも見えましたが、なぜかグロテスクな印象の方が強かったです。
狂ったように絵の具を塗っているのは、ハルワンが自分しかいない世界の中で、自分が今、ここにいるということを必死に確かめようとしているようにも見えました。

作品の中には時にレバノンの内戦についての話も織り交ぜられ、作品を観ていて、色々なことについてとても考えさせられました。
そして、自分自身は自分で認識できているようで、一人でいる時はこんなにとらえられないものなのか、と思いました。

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ムアワッド氏本人は出演しませんが…、2014年度の主な演劇賞を多数受賞した衝撃作『炎 アンサンディ』(作:ワジディ・ムアワッド、演出:上村聡史)が2017年3月、世田谷パブリックシアターで再演されますので、ぜひこちらもご覧ください!

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