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オリヴィエ・ピィのグリム童話『少女と悪魔と風車小屋』新演出版のこと (横山義志)

SPAC文芸部 横山義志

このオリヴィエ・ピィの『グリム童話』は、すでに2009年にも招聘し、そのあと宮城聰演出によるSPAC版も上演している。それでもなお、この「新演出版」をもう一回見ておきたい、見ていただきたいと思うのは、これがちょっと奇跡のような作品だからだ。オリヴィエ・ピィという、どちらかというとややこしい表現を好む劇作家が、グリム童話の「暴力性」に魅了され、極めて簡潔で力強い舞台作品を作り上げることになった。演劇が持つ力というものを、これほどストレートに見せてくれる作品はなかなか見当たらない。少女の手が切られる瞬間、私たちはその痛みと苦しみを共にする。だが、それが「お芝居」に過ぎないことは、子どもだってよく知っている。それでも、この虚構の受苦を通じて、私たちは自分自身が生きている世界の奇跡に立ち会うことになる。

この「新演出版」にも、けっこう驚かされた。2009年に上演されたバージョンに比べ、ずっとテンポが早くなっている。ちょっと詩的な技巧を凝らした台詞さえ、間を取ったりすることなく、さらっと言ってしまう。「悪魔」の役だけは前回と同じだが、他は全て、かなり若い俳優ばかりになっていて、俳優が一人減っている。舞台装置も、以前にもましてシンプルになっている。オリヴィエ・ピィはアヴィニョン演劇祭の芸術監督になって、この作品にお金をかけるのではなく、むしろ極度に素朴な「旅回り芝居」の形式に近づけようとした。そして、若い俳優たちの演技の力だけで、おどろおどろしくも美しい「グリム童話」の世界を立ち上がらせようとしている。この新演出版はアヴィニョン演劇祭での初演後、フランス内外でツアーをつづけ、さらに多くの観客に出会ってきた。それは「少女」を演じるデリア・セピュルクル・ナティヴィをはじめとする俳優たちの鮮烈な魅力のためでもあり、彼らが本当にこの作品を信じ、そこに見出したものを私たちと分かち合いたいと思ってくれているからでもある。

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この『少女と悪魔と風車小屋』という戯曲に興味を持った方は、ぜひ以下もご参照ください。

「芸術と娯楽 オリヴィエ・ピィ『少女と悪魔と風車小屋』について」

 

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オリヴィエ・ピィのグリム童話『少女と悪魔と風車小屋』
5/7(土)~8(日)
舞台芸術公園 野外劇場「有度」
◆公演の詳細はこちら
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