今年の演劇祭後半の目玉だったSPAC祝祭音楽劇の頂点『マハーバーラタ』。2014年には世界最高峰の演劇の祭典「アヴィニョン演劇祭」の公式プログラムとして招聘を受け、伝説の会場「ブルボン石切場」で上演。約1,000席の客席を連日満席にし、スタンディングオベーションの嵐を受けました。
その後も各地で上演を重ね、さらに深化した本作が、2015年以来3年ぶりに静岡・駿府城公園に登場。待ちわびたSPACファンをはじめ多くのお客様が詰め掛け、4公演全て満席となり、まさにせかい演劇祭の大トリを飾るにふさわしい盛り上がりとなりました。
本作の公演初日(5/3)の模様を、シアタークルーのペンネーム「IVY」さんが寄せてくださいましたので、紹介します。
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5月2日。『マハーバーラタ』(以下、『マハ』と略す。)の初日を明日に控えての大雨。宮城さんは雨男らしいので、流石といえば流石だが…明日の天気はどうだろうか…。
そして翌日。晴天ではないが雨は降らないとの予報。一安心。『マハ』初日のこの日はお昼に芸術劇場で『シミュレイクラム/私の幻影』が上演された。私はこれを観た後、『マハ』のために駿府城公園へと移動。私以外にも多くの人が『マハ』を観るため駿府城公園へ行く模様。
16時30分。『マハ』の開演は19時頃だが早めに来たのはフェスティバルgardenでの広場トークを聞くため。リラックスした雰囲気の中、安藤裕康さん、金森穣さん、宮城聰さんの3人で「世界で勝負する舞台芸術とは」というテーマでトークが行なわれた。テーマがテーマだけに演劇に興味のある私にとっては貴重なお話が聞けた。
特に面白いと感じたのは金森さんと宮城さんで世界に対する考えや戦略が正反対だったこと。世界で戦うお二人はまた日本で数少ない芸術監督でもあるが、この違いは非常に興味深かった。
そして気付けば一時間が経過しトーク終了。
18時15分から同じくフェスティバルgardenでプレトーク。『マハ』に関しては多少の知識があったが、もちろんこれにも参加。プレトーク終了後、みんな仮設劇場に向けてぞろぞろと動き出し、チケットに記載された整理番号順に整列。
18時40分。お客様が今か今かと入場を待ちわびるなか、ようやく客席開場。私の番号は80番台というかなりいい番号。いつもどおり、宮城さんをはじめSPACのスタッフの方たちに温かく迎えられ客席へ。
野外さらに円形(ドーナツ型)という特殊な舞台。舞台の雰囲気も演劇というよりお祭り会場と表現したほうが近く、いつもとは違った演劇体験になるなと感じた。最初はパイプ椅子に座ったが、最前列の桟敷席が空いていることに気付いた私。せっかくなので最前列のど真ん中に座った。
お客様の入場が終わり、演奏開始。演奏に注目していると、俳優さんたちが列になって登場。この登場の仕方が非常に幻想的というか非日常を強く感じさせ、私はこの登場で『マハ』の世界に引き込まれてしまった。
この劇では衣裳や小道具が白い折り紙を連想させるようなものだったり、また、この日は何かの綿毛(ポプラの綿毛らしい)がひっきりなしに舞い散っており、さらに劇を幻想的なものにしていた。
途中には演奏タイムやCMなどが入り、どこかいつものSPACを思わせるような笑いも。そんなこんなで気がつくとあっという間にエンディング。最後はナラ王とダマヤンティ姫がみんなに祝福され大演奏で終了。
360度のリング状舞台ということで、いろんなところから俳優さんが登場し、そのたびに客席からは歓声があがったり、ネタでは笑い声が聞こえたり、最後は大拍手。帰るお客さんの顔を見るとみんな大満足の様子。
360度の大パラノマ、迫力ある生演奏、動きと語りどれも素晴らしく。まさに、SPAC祝祭音楽劇の頂点と呼ぶのにふさわしい作品だった。
シアタークルー ペンネーム IVY
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『マハーバーラタ』は、今秋フランスで開催される日本博「ジャポニスム2018」の公式プログラムとしてパリのラ・ヴィレットで上演されます。さらなる深化を続ける本作とSPACを、引続き応援よろしくお願いいたします!
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◆公演日時
2018年11月19日(月)~25日(日)
◆会場
ラ・ヴィレット(仏) https://lavillette.com/
※「ジャポニスム2018」の詳細はこちら
https://japonismes.org/